輪島市で土地や建物の購入・売却を検討している方、あるいは被災者として住まい再建の選択肢を探している方が、2026年時点でまず把握しておくべき情報を整理します。
2024年1月1日の能登半島地震から2年半以上が経過しました。「輪島市の不動産市場は今どうなっているのか」「価格は底打ちしたのか、まだ下がるのか」「支援制度はいつまで使えるのか」——こうした疑問を持つ方に向けて、国土交通省・不動産情報ライブラリのデータ(2026Q1まで)、地価公示情報、市の公式情報、および現地動向の調査結果を組み合わせて解説します。
この記事でわかること:
- 震災前後・復興期(2022〜2026Q1)の土地取引価格の四半期別推移
- 2026年地価公示で見えた輪島市の位置づけ
- 輪島市の交通アクセス・生活施設・商業環境の現況
- 復興まちづくり計画・災害公営住宅の整備状況
- 輪島朝市・輪島塗産業の復興状況
- 住宅再建支援制度(わじま住まい再建支援事業など)の詳細
- 輪島市で不動産売買を行う際の具体的な注意点
輪島市の概要と地域特性
地理・規模
輪島市は石川県の能登半島北部に位置する日本海沿岸の市です。総面積は約426km²と石川県内で最大の面積を持ちますが、市域の大半は山地・丘陵地であり、平地は輪島市街地(河井町・鳳至町周辺)と門前地区に限られます。
2025年1月1日時点の人口は20,830人で、前年比で9.1%(2,091人)の減少を記録しています(出典:住民基本台帳ベース統計)。2015年時点の約29,200人からの10年間で28.6%の減少となり、2024年の地震発生以降は転出が大幅に加速しました。人口減少はリモートエリアの不動産需要・流動性に直結する重要な指標です。
交通アクセス
のと里山空港(能登里山空港)
輪島市南東部、輪島市三井町付近に位置するのと里山空港は、輪島市からの空路アクセスを担う唯一の空港です。2026年3月29日〜10月24日(夏ダイヤ)の運航スケジュールは以下の通りです(全便ANA):
| 便名 | 区間 | 出発 | 到着 |
|---|---|---|---|
| NH747 | 羽田→のと | 8:55発 | 9:50着 |
| NH748 | のと→羽田 | 10:30発 | 11:35着 |
| NH749 | 羽田→のと | 15:30発 | 16:30着 |
| NH750 | のと→羽田 | 17:10発 | 18:20着 |
出典:のと里山空港公式サイト(https://www.noto-airport.jp/flight/ )
1日2往復の運航で、羽田〜のと間は約55〜65分です。空港から輪島市中心部(河井町)まで車で約15分。2024年1月の地震後に一時的な運航制限が生じましたが、現在は通常ダイヤに戻っています。
道路
金沢市から輪島市中心部までは、のと里山海道(能越自動車道)経由で約100km、所要時間は約2時間です。金沢〜穴水間が無料区間(のと里山海道)で、穴水から輪島まではR249経由となります。
鉄道・バス
市内に鉄道路線はありません。2001年に北陸鉄道能登線(七尾線羽咋〜蛸島間)が廃線となって以来、輪島市内への鉄道アクセスは存在しません。金沢〜輪島間の公共バス(北陸鉄道・能登バス等)は所要約3時間で、本数は限られます。
生活施設と商業環境
医療
輪島市内の中核医療機関は市立輪島病院(輪島市河井町)です。内科・外科・整形外科・小児科をはじめ複数の診療科を持つ総合病院で、市内唯一の入院対応施設です(駐車場420台)。地震後も診療を継続しており、被災住民の医療需要に対応しています。
商業施設・スーパー
地震前、輪島市中心部には複数のスーパーマーケット・ドラッグストアが営業していましたが、被害・避難人口減少により一部が閉鎖・縮小しました。2025〜2026年にかけて、市の「復興チャレンジ・新規出店応援事業」の後押しもあり復活・新規開業が相次いでいます。地元スーパー「もとやスーパー」(輪島市町野町)はクラウドファンディングで復旧資金を調達し、ボランティア向けの宿泊施設「MOTOYA Base」の整備にも着手しています(2025年12月に第2回クラウドファンディング実施)。門前町道下地区には地元住民が運営する新規スーパーが開店しました(NHK報道)。なお、奥能登エリアの開いているショップ情報は「能登ステイ」(https://notostay.com/shopping/ )のリストが継続更新されており参考になります。
輪島朝市
輪島朝市は約1,000年の歴史を持つ日本三大朝市のひとつで、輪島市の観光・文化の象徴的存在です。2024年1月1日の地震に伴う大規模火災により朝市通り周辺の多くの建物が焼失しましたが、2025年春以降は仮設スペースでの営業を再開しています。
- 現在の所在地: 石川県輪島市河井町(朝市通り周辺)
- 営業時間: 8:00〜12:00頃(変更になる場合あり)
- 定休日: 毎月第2・第4水曜日、1月1〜3日
2026年現在の出店規模は震災前より縮小していますが、地元の漁師・農家・工芸品業者が干物・海産物・輪島塗の漆器などを並べており、現地購入が復興支援につながります。本格的な朝市拠点の再建は「早くても3年後」(2025年11月時点)との見込みで、2028〜2029年頃を目標とした約2,500m²の屋根付き広場整備が検討されています(出典: 政府広報オンライン )。また、全国各地での「出張輪島朝市」は250回以上を数え、輪島朝市の知名度維持に貢献しています。
輪島塗産業
輪島塗(国指定重要無形文化財)は輪島市の基幹地場産業です。地震・火災により多くの塗師・工房が被害を受け、2025年5月時点では多くが未再開でしたが、徐々に復活の動きが出ています。2026年9月には仮設トレーラー工房「WAJIMANURI VILLAGE」のオープンが予定されており、見学・購入・飲食が楽しめる複合施設となる見込みです(出典: シロシル能登 )。輪島塗復興協議会(https://www.wajimanuri-rc.jp/ )が生産・販路の回復を支援しており、東京・青山スクエアでの復興支援交流作品展(2026年7月24日〜8月6日)も開催されました。
2024年の二重被災と市場への影響
2024年1月1日:能登半島地震
2024年1月1日16時10分、能登半島を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生しました。輪島市では最大震度6強〜7を観測し、建物の全壊・大規模半壊が多発しました。地震直後に輪島市中心部(河井町・鳳至町)で大規模火災が発生し、約240棟が焼失しました。津波による被害も記録されています。
応急仮設住宅は44団地2,897戸(地震関連)が整備され、2025〜2026年時点でも多くの住民が仮設住宅での生活を続けています。
2024年10月21日:奥能登豪雨
地震から9ヶ月後の2024年10月21日、奥能登地域を記録的豪雨が襲い、輪島市でも河川氾濫・土砂災害が発生しました。地震で地盤が緩んでいたことも被害を拡大させ、さらに4団地264戸の仮設住宅が追加整備されました。二重被災により、復興の遅れとともにハザードリスクの深刻化が進んでいます。
人口動態
| 時点 | 人口(住民基本台帳) | 前年比 |
|---|---|---|
| 2015年1月1日 | 約29,200人 | — |
| 2024年1月1日(地震前) | 約22,900人 | — |
| 2025年1月1日 | 20,830人 | -9.1%(-2,091人) |
出典:各年住民基本台帳(グラフで見る!輪島市の人口と世帯 https://jp.gdfreak.com/public/detail/jp010050000001017204/15 )
人口減少は不動産需要の縮小と直結します。輪島市の不動産は、在住者の住居需要よりも、復興事業・相続処理・公的機関による取得などが価格形成の主要因になっている局面が続いています。
輪島市の不動産取引価格統計(2022〜2026Q1)
以下のデータは国土交通省・不動産情報ライブラリ(reinfolib、石川県・area=17)の取引価格情報をもとにした集計です。輪島市は市域が広いものの取引件数が限られており、n<5の期間は参考値として取り扱うことを推奨します。
宅地(土地のみ)四半期別推移
| 時期 | 中央値(万円/m²) | P25 | P75 | サンプル数 | 状況 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022年Q2 | 3.0 | 2.9 | 3.0 | 2 | 地震前・参考値 |
| 2022年Q3 | 1.2 | 0.6 | 2.5 | 5 | 地震前 |
| 2023年Q1 | 0.5 | 0.2 | 0.6 | 5 | 地震前 |
| 2023年Q2 | 1.5 | 0.8 | 2.3 | 5 | 地震前 |
| 2023年Q3 | 1.2 | 0.2 | 2.2 | 2 | 地震前・参考値 |
| 2024年Q1 | 0.6 | 0.2 | 0.6 | 7 | 地震直後 |
| 2024年Q4 | 0.5 | 0.3 | 0.9 | 17 | 地震後・公費解体期 |
| 2025年Q1 | 0.9 | 0.3 | 1.4 | 10 | 復興期 |
| 2025年Q2 | 0.8 | 0.3 | 1.3 | 21 | 復興期 |
| 2025年Q3 | 0.9 | 0.3 | 1.2 | 25 | 復興期 |
| 2025年Q4 | 1.2 | 0.5 | 1.9 | 46 | 復興期・取引最多 |
| 2026年Q1 | 1.2 | 0.4 | 2.2 | 11 | 最新期(参考) |
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ API(XIT001)石川県取引価格情報
地震直後の2024年Q1では取引数7件・中央値0.6万円/m²に低下し、2024年Q4(公費解体が本格化した時期)にはさらに0.5万円/m²まで下がりました。2025年を通じて取引件数が拡大し、Q4には46件・中央値1.2万円/m²と2025年のピークに。2026年Q1は11件・中央値1.2万円/m²で横ばいです(Q1は取引申告の季節性から件数が少ない点に注意)。
宅地(土地と建物)四半期別推移
| 時期 | 中央値(万円/m²) | P25 | P75 | サンプル数 | 状況 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022年Q3 | 2.6 | 1.6 | 3.4 | 3 | 地震前・参考値 |
| 2022年Q4 | 0.5 | 0.3 | 0.8 | 2 | 地震前・参考値 |
| 2023年Q1 | 3.0 | 0.3 | 5.3 | 4 | 地震前・参考値 |
| 2023年Q2 | 1.4 | 0.2 | 2.4 | 3 | 地震前・参考値 |
| 2023年Q3 | 2.1 | 0.6 | 4.4 | 4 | 地震前・参考値 |
| 2024年Q4 | 0.8 | 0.1 | 2.9 | 10 | 地震後 |
| 2025年Q1 | 0.9 | 0.4 | 3.1 | 7 | 復興期 |
| 2025年Q2 | 0.7 | 0.3 | 1.5 | 9 | 復興期 |
| 2025年Q3 | 1.2 | 0.3 | 2.1 | 11 | 復興期 |
| 2025年Q4 | 1.8 | 0.2 | 9.0 | 11 | 復興期 |
| 2026年Q1 | 1.5 | 0.3 | 30.9 | 3 | 最新期・参考値 |
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ API(XIT001)石川県取引価格情報
宅地(土地と建物)は全期間を通じてサンプル数が少なく、P75が大きく乖離する期が複数あります。2025年Q4のP75が9.0万円/m²、2026年Q1のP75が30.9万円/m²と極端に高いのは、少数サンプル(n=11、n=3)のなかに例外的な高値取引が含まれているためと考えられます。中央値・P25を重視した解釈が適切です。
地価公示からみる輪島市の地価水準
2025年・2026年の公示地価推移
国土交通省が毎年3月に発表する「地価公示価格」は、取引事例に基づく実勢価格の補完情報として参考になります。
| 年度 | 平均公示地価(円/m²) | 前年変動率 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2025年(令和7年) | 約26,050円/m²(2.6万円/m²) | -14.3% | e-estate.jp等集計 |
| 2026年(令和8年) | 約24,600円/m²(2.5万円/m²) | -5.47% | tochidai.info |
出典:tochidai.info 輪島市地価、e-estate.jp 輪島市土地価格
2026年地価公示では、輪島市河井町参部(商業地)が**全国最大の下落率(-93.7%)**を記録しており、能登半島地震の甚大な影響が数字にも現れています。一方で住宅地の変動率は-5.47%と2025年(-14.3%〜-16.6%)よりも下落幅が縮まっており、価格の「下落スピード鈍化」が読み取れます。これは取引件数増加(2025年Q4の46件)と整合します。
長期的には、輪島市の地価は1992年(約183,300円/m²)がピークで、現在はその約7分の1まで低下しています。能登半島地震はこの長期下落トレンドを一段と加速させた形です。
全国・石川県の市況との対比
| 指標 | 値 | 時点 |
|---|---|---|
| 住宅総合指数(全国) | 144.7 | 2025年1月 |
| マンション指数(全国) | 217.8 | 2025年1月 |
| 金沢市 宅地(土地のみ)中央値 | 8.3万円/m² | 2025Q4 |
| 輪島市 宅地(土地のみ)中央値 | 1.2万円/m² | 2025Q4 |
出典:国土交通省 不動産価格指数(月次)・不動産情報ライブラリ
全国のマンション指数が2010年比217.8と上昇を続けるなか、輪島市の宅地中央値1.2万円/m²は金沢市(8.3万円/m²)の約15%水準にとどまります。この乖離は震災要因だけでなく、地震前からの人口減少・経済規模の差を反映しています。
近隣能登地域との価格比較(2025Q4・参考)
2025年Q4時点での能登地域主要市町の宅地取引中央値を比較します。
| 市区町村 | 宅地(土地のみ)中央値 | サンプル数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 輪島市 | 1.2万円/m² | 46 | 復興期・取引増 |
| 七尾市 | 1.2万円/m² | 25 | 南能登・交通良好 |
| 珠洲市 | 0.2万円/m² | 8 | 最北端・被害甚大 |
| 穴水町 | 0.3万円/m² | 3 | 参考値 |
| 能登町 | 0.3万円/m² | 8 | 参考値 |
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ API(XIT001)石川県取引価格情報
輪島市(1.2万円/m²)は七尾市と同水準ですが、七尾市は輪島市より南部に位置してのと鉄道が通じており、金沢へのアクセスが良好です。珠洲市・穴水町・能登町は輪島市よりさらに低い水準で、能登半島北部ほど地価が低い傾向があります。
復興まちづくり計画と開発動向
輪島市復興まちづくり計画(2025年2月策定)
輪島市は2025年2月に「輪島市復興まちづくり計画」を策定しました。「日常生活の回復」「生業の再生」「まちの再構築」の3つを目標に掲げ、今後10年間の復興の方向性を示しています。
著名建築家の隈研吾氏が復興まちづくり特別アドバイザーに就任(2024年4月)し、輪島市の歴史・文化・伝統・景観を活かした特色ある魅力的なまちづくりへの広範な助言を行いました。フォローアップ委員会は2026年2月17日に開催されており、計画の進捗確認が続けられています。
災害公営住宅の整備状況
被災住民が仮設住宅から恒久的な住まいへ移行するための「災害公営住宅」の整備は、2026年春時点でも輪島市内の多くの地区で着工ゼロの状態が続いています(出典: 日本経済新聞 )。
「集約」か「集落維持」かという住民意見の調整が難航しており、具体的な進展が見られる地区は限られています。2026年現在の進捗状況:
- 宅田地区:実施設計技術支援業務の公募型プロポーザルで鴻池組JVを特定(ECI方式採用)、設計段階(出典:建設通信新聞 [https://www.kensetsunews.com/archives/1204109 )](https://www.kensetsunews.com/archives/1204109 ))
- 鳳至地区:2026年6月に実施設計技術支援業務の公募型プロポーザルを実施
災害公営住宅の完成・入居開始はいずれの地区も2027年以降になる見通しで、仮設住宅の退去・住まい再建の具体的なスケジュールは各世帯が行政窓口に確認する必要があります(出典: 石川県 )。
住宅再建支援制度
輪島市では複数の住宅再建・修繕支援制度が設けられています(いずれも内容・期限が変更される可能性があるため、最新情報は輪島市の窓口・ウェブサイトで確認のこと)。
わじま住まい再建支援事業
令和6年能登半島地震または令和6年奥能登豪雨により住宅に被害を受けた方が輪島市内で住宅を再建(建設・購入・修繕)する場合の費用補助です。
対象要件:
- 半壊以上の罹災証明書を取得していること
- 申請時に応急仮設住宅に入居していないこと
- 再建住宅に住民票があること
補助金額:
| 再建区分 | 補助対象額 | 上限(一般世帯) | 上限(子育て世帯) |
|---|---|---|---|
| 建設・購入 | 工事費-800万円の超過分 | 200万円 | 300万円 |
| 修繕 | (工事費-300万円)×10% | 100万円 | 150万円 |
申請・相談窓口:輪島市役所本庁舎1階 被災者生活再建支援課
- 電話:0768-23-4871
- メール:saiken@city.wajima.lg.jp
- 受付:月〜金 9:00〜17:00(郵送申請も可)
出典:輪島市公式サイト https://www.city.wajima.ishikawa.jp/article/2025050200017/
輪島市住まい再建・入居支援事業補助金
住まい再建に伴う引越し・入居費用を補助する制度です。
出典:輪島市公式サイト https://www.city.wajima.ishikawa.jp/article/2025011500033/
わじま住まい修繕支援金
2025年6月26日に開始した、住宅修繕に特化した支援金制度です。
出典:輪島市公式サイト https://www.city.wajima.ishikawa.jp/article/2025062600027/
ハザードリスク
輪島市での不動産評価においてハザードリスクは特に重要な要素です。
A40(津波浸水想定)
輪島市は日本海に面しており、海岸線一帯が津波浸水想定区域に含まれます。2024年1月1日の能登半島地震では津波が実際に発生し、複数の市街地に浸水被害をもたらしました。この地震を受けて津波浸水想定区域の見直しが進んでいます。取引に際しては旧来のマップではなく、石川県・輪島市が公表する最新版ハザードマップを確認することが必須です。
A33(土砂災害警戒区域)
能登半島の地形は山地・丘陵地が多く、輪島市内でも多くのエリアがA33(土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域)に指定されています。2024年地震による地盤の緩みに加え、2024年10月の豪雨によって土砂災害の危険性がさらに高まっています。急傾斜地・渓流沿いの物件については地盤調査が不可欠です。
A49(高潮浸水想定)
石川県分は国土数値情報に未収録のため、参照データなし。
購入・売却前に知っておくべきポイント
データの解釈上の注意
取引目的の多様性
震災後の輪島市では、①被災者の生活再建のための売却、②相続処理に伴う売却、③公費解体後の更地売却、④復興事業・行政による取得、⑤投資目的の取得、など多様な動機が混在しています。2025〜2026年の「取引件数増加」は市場の正常化ではなく、こうした非定型的な取引が増えていることを主因とする可能性があります。
サンプル数の問題
2026年Q1の宅地(土地と建物)はn=3と非常に少なく、統計的意味はほぼありません。宅地(土地のみ)のn=11も小規模で、単一の高額または低額取引が中央値を動かすレベルです。個別物件の評価には、データだけでなく現地調査・専門家の意見が不可欠です。
取引時に確認すべき事項
① 罹災証明書の確認
売却物件が罹災証明書(全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊)を取得している場合、証明書の内容と実際の建物状態の乖離がないか、専門家による確認が必要です。
② 地盤調査
2024年地震により地盤の変状(液状化・地すべり・断層変位)が生じている箇所があります。購入前の地盤調査(スウェーデン式サウンディング試験等)の実施を強く推奨します。
③ ハザードマップの最新版確認
地震後に津波浸水想定区域が改訂されているため、最新版を確認してください。
④ 境界の確認
地震・津波・地盤変動により境界標が移動・消失している可能性があります。土地家屋調査士による境界確認が推奨されます。
⑤ 公費解体・支援制度との関係
公費解体後の更地については、所有権・利用計画・行政との協議状況を事前に確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 輪島市の土地は今「買い場」ですか?
A. 本記事では「買い場かどうか」という評価的判断は行いません。2025Q4〜2026Q1の中央値は1.2万円/m²(宅地・土地のみ)で、金沢市(8.3万円/m²)の約15%水準です。石川県内の全市区町村の取引中央値の分布で見ると、輪島市は下位10%前後の価格帯に位置します。価格水準の低さには、人口減少・ハザードリスク・アクセス面・復興の不確実性など複合的な理由があり、個別の事情に応じて専門家に相談することを推奨します。
Q. のと里山空港は地震後も使えますか?
A. 2026年現在、ANA羽田線が1日2往復で通常運航しています。ただし悪天候による欠航リスクは常にあるため、大型商業施設・医療機関への日常的なアクセスは車(金沢まで約2時間)を前提とした生活設計が必要です。
Q. 輪島朝市はいつ元に戻りますか?
A. 2026年現在も仮設スペースでの営業が続いており、本格的な拠点再建の完了は2028〜2029年頃が目標とされています。訪問前に最新情報を輪島市観光協会で確認することを推奨します。
Q. 住宅再建支援を受けながら土地を売却できますか?
A. 支援制度によって対象範囲・条件が異なります。特に「わじま住まい再建支援事業」は「輪島市内での再建」が前提で、売却・転出には適用されない場合があります。輪島市 被災者生活再建支援課(0768-23-4871)に個別に確認することが必要です。
まとめ
2024年1月1日の能登半島地震、同年10月の奥能登豪雨という二重被災を受けた輪島市の不動産市場は、2026年時点でも「復興途上」の段階にあります。
取引価格データをみると、地震直後の2024年Q1〜Q4に宅地中央値が0.5〜0.6万円/m²まで低下し、2025年を通じて取引件数が拡大、2025年Q4・2026年Q1では中央値が1.2万円/m²まで回復しています。ただしこの数値を「市場の正常化」として読むことには慎重である必要があります。サンプルの多くが被災後の更地売却・相続処理・復興事業向け取得であり、需要と供給の通常の均衡を反映したものではないからです。
地価公示では2026年に-5.47%と前年(-14.3%)より下落幅が縮小し、下落速度の鈍化が見られます。一方で輪島市河井町参部は全国最大下落率(-93.7%)を記録しており、エリアによる状況の差が大きいことも示されています。
復興まちづくり計画(2025年2月)・隈研吾氏のアドバイザー就任・住宅再建支援事業などの公的な枠組みが整備されつつある一方、災害公営住宅の着工遅れ・人口流出の継続など課題も多く残っています。輪島市で不動産売買を検討する方は、最新のハザードマップ確認・地盤調査・支援制度との整合確認を経て、宅地建物取引士に相談することを強く推奨します。
本記事は参考情報です。実際の取引判断は宅地建物取引士にご相談ください。