はじめに — この記事が役に立つ人

能登半島エリア(七尾市・輪島市・珠洲市・穴水町・能登町)で土地や不動産の購入・売却・相続を検討しているなら、まず確認すべき情報がいくつかあります。本記事はそれらをひとつにまとめたものです。

  • 「相場は今いくら?」 — 国土交通省の不動産取引価格データ(2026年Q1まで)を市区町村・物件種別ごとに整理しています
  • 「地震後の価格はどう変わったのか?」 — 2024年1月1日の能登半島地震前後のデータ比較と背景を解説します
  • 「復興はどこまで進んでいるのか?」 — 仮設住宅・公営住宅・インフラ整備の現状を時系列で整理します
  • 「リスクは何か?」 — 津波・土砂・豪雨の複合ハザードと不動産価格の関係を説明します

免責事項: 本記事の価格データは参考情報であり、正確性・完全性を保証しません。実際の取引判断は、現地の宅地建物取引士への相談と国土交通省不動産情報ライブラリでの個別確認を必ず行ってください。


能登半島の地理と交通アクセス

半島の地理的特徴

能登半島は石川県の北部から日本海に向かって突き出した全長約100kmの半島です。南端の七尾市から先端の珠洲市まで、距離の割に移動に時間を要する地形が特徴で、この「陸の孤島」的な性質が、2024年1月地震時の被害の甚大化と復興の遅れの一因ともなりました。

半島を大きく3つのゾーンに分けると:

  • 中能登(七尾市・中能登町・志賀町): 鉄道アクセスがあり、加賀平野との連絡が比較的容易。行政・医療機能が相対的に充実
  • 奥能登(輪島市・珠洲市・能登町・穴水町): バス・車のみ、移動時間が長い。地震被害が集中
  • 能登島(七尾市内): 連絡橋でアクセス可能な観光・漁業地域

鉄道・バスアクセス

のと鉄道(七尾〜穴水): 2024年1月の地震で全線運休を余儀なくされたのと鉄道(七尾駅〜穴水駅)は、2025年8月までに全線の復旧・通常ダイヤでの運行再開を果たしています。七尾駅はJR七尾線と接続しており、金沢駅まで特急・普通あわせて約1時間〜1時間半程度です。

奥能登エリアのバス: 輪島市・珠洲市・能登町への公共交通はバスのみです。北鉄奥能登バスは2025年3月から能登町エリアでの運行を再開しました。また、2024年9月から能登空港(輪島市)を拠点とした急行バスが運行しており、輪島市方面6往復・珠洲市方面4往復・能登町方面3往復が設定されています。

車でのアクセス(目安):

  • 金沢市→七尾市: 約1時間(のと里山海道経由)
  • 金沢市→輪島市: 約1時間30分〜2時間
  • 金沢市→珠洲市: 約2時間〜2時間30分

奥能登エリアへの移動は基本的に車が必須の生活環境です。奥能登半島外周道路(輪島〜珠洲方面)の一部区間では2025年末時点でもなお通行制限が残っていました。


2024年能登半島地震 — 被害と復興フェーズ

地震・豪雨の複合被害

2024年1月1日(元日)午後4時10分、能登半島沖でマグニチュード7.6の地震が発生しました。輪島市・珠洲市では最大震度7を記録し、広範囲にわたって家屋の全壊・大規模半壊が相次いだほか、輪島市中心部では大規模な火災も発生しました。

さらに2024年9月21日には、線状降水帯による記録的な豪雨が能登半島北部を直撃し、地震によって脆弱化した斜面で土砂崩壊が多発する複合災害となりました。地震だけでなく、豪雨・土砂という複数のハザードが組み合わさった点が、この地域の不動産リスクを考える上で重要です。

人口流出の規模

石川県の発表によると、甚大被害を受けた4市町(輪島市・珠洲市・能登町・穴水町)の合計人口は、2023年12月から2024年11月の1年間で約7.8%減少(約55,000人→約51,000人)しています。全国平均の人口減少率(年間約0.5〜0.8%)を大幅に上回るペースです。輪島市では小中学生の数が1年間で約30%減少するなど、子育て世代の流出が特に顕著です(日本経済新聞報道)。

復興フェーズの現在地

フェーズ 時期 主な内容
応急対応期 2024年1月〜 捜索救助・避難所開設・ライフライン仮復旧
復旧期 2024年〜2025年末 公費解体・仮設住宅整備・インフラ本格復旧
復興移行期 2026年〜 恒久住宅確保・産業再生・まちづくり計画実施

2025年末時点で公費解体はほぼ完了し、復興段階に移行しています。しかし2025年11月時点で約1.8万人が仮設住宅(建設型または「みなし仮設」)に居住を続けており、うち約66%が退去の見通しが立っていない状況です(共同通信の被災者調査)。このうち約5,000人は金沢市や新潟県などでみなし仮設に入居しており、地元への帰還が不透明な状況が続いています。

2026年7月には七尾市で石川県初の災害公営住宅14戸が完成し、8月から入居が始まりました。輪島市・珠洲市・穴水町・能登町でも複数の復興公営住宅整備が進行中ですが、完成は2026年〜2027年以降を要する見込みです。


市区町村別 取引価格データ(2024Q4〜2026Q1)

以下の価格データは国土交通省不動産情報ライブラリ(取引価格情報API)に基づく宅地取引の中央値です。サンプル数(n)が5未満のデータは集計精度が低く参考値扱いとなります。

七尾市

七尾市は能登半島の南端に位置し、JR七尾線・のと鉄道の接続駅である七尾駅を擁します。恵寿総合病院が地域の中核医療機関として機能しており、商業施設も能登半島内では最も充実しています。七尾市の都市マスタープラン改訂にあわせて立地適正化計画が新たに策定されており、医療・商業機能の集約が図られる方針です。

宅地(土地のみ):

時期 中央値(万円/m²) P25(万円/m²) P75(万円/m²) n
2024年Q4 1.7 0.7 1.8 9
2025年Q2 0.8 0.3 1.5 18
2025年Q3 0.9 0.3 1.4 14
2025年Q4 1.2 0.3 1.9 25
2026年Q1 1.2 0.3 1.9 9

宅地(土地と建物):

時期 中央値(万円/m²) n
2025年Q3 2.3 13
2025年Q4 1.3 13

公示地価(参考):

  • 2025年: 平均2万9,420円/m²(前年比−9.3%)
  • 2026年: 平均2万8,180円/m²(前年比−4.18%)— 下落率は縮小傾向

輪島市

輪島市は2024年地震で最も甚大な被害を受けた地域の一つです。旧市街の一部が火災で焼失し、輪島朝市(日本三大朝市のひとつ)は被災後、市内スーパー内での常設や全国各地での出張開催を続けています。朝市通りの現地での本格営業再開は、2029〜2030年頃を目標としている段階です。

宅地(土地のみ):

時期 中央値(万円/m²) P25(万円/m²) P75(万円/m²) n
2025年Q1 0.9 0.3 1.4 10
2025年Q2 0.8 0.3 1.3 21
2025年Q3 0.9 0.3 1.2 25
2025年Q4 1.2 0.5 1.9 46
2026年Q1 1.2 0.4 2.2 11

宅地(土地と建物):

時期 中央値(万円/m²) n 備考
2025年Q4 1.8 11
2026年Q1 1.5 3※ ※参考値。P75が30.9万円/m²と外れ値含む

公示地価(参考):

  • 2025年: 平均2万6,050円/m²(前年比−14.3%)

珠洲市

珠洲市は半島の最先端に位置し、2024年地震で最も深刻な被害を受けた市のひとつです。市内の取引自体が極端に少なく、サンプル数が常時5〜8件程度と少ないため、各四半期の中央値の変動は大きく、価格の信頼性には留意が必要です。

宅地(土地のみ):

時期 中央値(万円/m²) n
2024年Q4 0.2 3※
2025年Q2 0.4 5
2025年Q3 0.2 3※
2025年Q4 0.2 8
2026年Q1 0.5 6

※n<5は参考値。

公示地価(参考):

  • 2025年: 平均1万0,063円/m²(前年比−14.6%)— 能登半島内でも特に下落幅が大きく、全国の下落率上位に位置

穴水町・能登町

穴水町はのと鉄道の終点(穴水駅)がある奥能登の玄関口です。能登町は半島東側の九十九湾や柳田植物公園などを含む自治体です。いずれもサンプル数が少ない四半期が多く、価格のばらつきが大きい点に注意してください。

宅地(土地のみ):

自治体 時期 中央値(万円/m²) n
穴水町 2025年Q1 1.3 11
穴水町 2025年Q2 1.1 7
穴水町 2025年Q3 0.3 14
穴水町 2025年Q4 0.3 3※
能登町 2025年Q1 0.5 8
能登町 2025年Q3 0.6 5
能登町 2025年Q4 0.3 8
能登町 2026年Q1 0.7 3※

※n<5は参考値。穴水町は2025年Q2→Q3で中央値が大幅に変動しており、取引事例の内容によるばらつきが大きいと推察されます。


石川県内での価格ポジション(2026年Q1比較)

能登半島各市町の価格水準を、石川県内の他地域と比較すると:

市区町村 宅地(土地のみ)2026Q1 中央値 n
野々市市 9.7万円/m² 5
金沢市 8.5万円/m² 55
白山市 5.2万円/m² 34
小松市 2.8万円/m² 18
七尾市 1.2万円/m² 9
輪島市 1.2万円/m² 11
珠洲市 0.5万円/m² 6

金沢市の中央値(8.5万円/m²)を基準にすると、七尾市・輪島市は同水準の約14%、珠洲市は約6%の水準です。この差は単純な「割引」ではなく、都市機能・交通利便性・ハザードリスク・人口動態・市場流動性のすべてが反映された結果です。


人口動態と価格への中長期的影響

不動産価格の長期動向を左右する最大の要因のひとつが人口動態です。地震前から続いていた能登半島の高齢化・人口流出が地震によって加速しました。

石川県や国は、以下の支援策で地元定住・Uターンを促進しています:

  • 能登創生住まい支援金: 新築・購入費に最大200万円、修繕費に最大100万円(石川県・各市町)
  • 国の臨時特例給付金: 自宅再建などに最大300万円

ただし、2025年11月時点で仮設住宅居住者の約66%が退去の見通しを持てない状況であり、特に子育て世代の流出は継続しています。帰還者数の動向が、能登半島の不動産市場の中長期的な方向性を大きく左右します。


ハザード情報 — 地震・津波・土砂・豪雨の複合リスク

津波浸水想定区域(A40)

日本海沿岸の能登半島全域は、2024年地震以降に見直された津波浸水想定区域の対象です。輪島市・珠洲市の沿岸部をはじめ、七尾市・羽咋市の沿岸部にも想定区域が存在します。海沿いの物件を検討する際は、国土数値情報の津波浸水想定(A40)と各市の津波ハザードマップを必ず確認してください。珠洲市では市が独自のハザードマップを公開しています。

土砂災害警戒区域(A33)

能登半島は山がちな地形が多く、土砂災害警戒区域(A33)が半島内に広く分布しています。2024年9月の記録的豪雨では、地震で脆弱化した斜面が崩壊し、輪島市・珠洲市で深刻な土砂災害が発生しました。地震による地盤変動後は、従来のハザードマップが現状のリスクを必ずしも反映していない可能性があります。個別地点の現況確認が特に重要です。

高潮浸水想定(A49)

石川県の高潮浸水想定データは、国土数値情報には現時点で収録されていません。

複合災害リスク

2024年の事例(地震→建物・地盤被害→豪雨→土砂・洪水)が示すように、複数のハザードが連鎖する「複合災害」が現実のリスクとして顕在化しました。能登半島の物件検討にあたっては、個別ハザードを単体で評価するだけでなく、複数リスクが重なり合う可能性を前提とした判断が求められます。


復興計画と今後の開発動向

輪島市の復興計画(3フェーズ)

輪島市は2024年から2034年の10年間を3段階で進める復興計画を策定しています:

  • 復旧期(2024〜2025年): 公費解体、インフラ復旧、仮設住宅整備
  • 再生期(2026〜2029年): 恒久住宅確保、産業再生、朝市通り一帯の整備
  • 創造期(2030〜2034年): 新たなまちづくりの定着、観光・産業の本格再生

輪島朝市復興協議会の最終報告(2026年1月)によると、朝市通りの北側に屋根付き広場(電気・水道・トイレ設備付き)を整備し、この広場と朝市通りを併用する形での営業再開を2029〜2030年頃に目指す計画です。震災後、朝市組合員による「出張輪島朝市」が全国各地で250回以上開催されており、市内スーパーには常設店舗も設置されています。

七尾市の立地適正化計画

七尾市は2025年度に立地適正化計画を新たに策定し、都市機能誘導区域(医療・福祉・商業など)と居住誘導区域を指定する方針です。将来的な人口縮小を見越したコンパクトシティを目指す方向で、これにより市内の地区間での将来的な資産価値の格差が変化する可能性があります。

のと鉄道・交通インフラの回復

  • のと鉄道: 2025年8月までに七尾〜穴水間が全線復旧・通常ダイヤ運行再開
  • JR七尾線: 金沢〜七尾間の通常運行が継続中
  • 能登空港(のと里山空港): 金沢〜羽田間の定期航空便が運航再開
  • 能登空港発着バス: 輪島市・珠洲市・能登町方面への急行バスが運行中(2024年9月〜)

物件を探す方へ — よくある質問

Q1: 公費解体後の土地は通常通り取引できますか?

公費解体によって建物が撤去された土地は更地として取引可能です。ただし、土地の境界確認が未了のケースや、相続問題・所有者不明問題を抱える土地も被災地では多く存在します。取得前に必ず登記情報(法務局またはオンライン登記情報提供サービス)の確認と、司法書士・土地家屋調査士への相談を行ってください。

Q2: 復興公営住宅の入居条件は?

復興公営住宅(災害公営住宅)は、能登半島地震で住家を失い自力再建が困難な被災世帯を対象とした賃貸住宅です。七尾市では2026年7月に14戸が完成し、8月から入居開始となりました。入居条件・家賃・申込方法は各市町窓口で確認できます。

Q3: 住まい再建の支援金はいつまで?

石川県・各市町の「能登創生住まい支援金」(新築・購入最大200万円、修繕最大100万円)と国の臨時特例給付金(最大300万円)があります。各種支援策の期限や要件は制度変更を伴うため、石川県や各市町の公式サイトで最新情報を確認してください。

Q4: 市場として取引は機能していますか?

七尾市では2025〜2026年を通じて宅地取引が継続して行われており(2025Q4: n=25、2026Q1: n=9)、通常の売買市場として機能しています。輪島市も2025Q4ではn=46と取引数が増加しています。一方、珠洲市は依然としてサンプル数が少なく(n=3〜8)、市場としての流動性が低い状況です。

Q5: ハザード情報はどこで確認できますか?

  • 国土交通省 ハザードマップポータルサイト (disaportal.gsi.go.jp) — 津波・土砂・洪水リスクを統合確認
  • 珠洲市ハザードマップ (city.suzu.lg.jp) — 市が公開する津波ハザードマップ
  • 国土数値情報 (nlftp.mlit.go.jp) — 津波浸水想定(A40)・土砂災害警戒区域(A33)のGISデータ(ダウンロード可能)
  • 輪島市 防火地図・津波ハザードマップ — 輪島市公式サイト

参考情報・免責事項

本記事の取引価格統計は国土交通省不動産情報ライブラリAPIに基づく参考情報であり、正確性・完全性を保証しません。宅地建物取引業法第35条に基づく重要事項説明の代替にはなりません。取引件数が少ない地区(n<5)のデータは集計精度が低く、市場実態と乖離する場合があります。

本記事は参考情報です。実際の取引判断は宅地建物取引士にご相談ください。


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